今回は、「あの頃、君を追いかけた」(原題:那些年,我們一起追的女孩;英題:You Are the Apple of My Eye)という台湾映画をご紹介したいと思います。
【作品紹介 & 感想】
本作品は、2011年公開(日本では2013年公開)の恋愛映画です。
映画情報サイト 「Movie Walker」に、以下のあらすじ紹介があります。
1994年、台湾中西部の町・彰化。男子高校生のコーチン(クー・チェンドン)は仲間たちとともに、しょうもないいたずらをして授業を妨害してばかりいる。業を煮やした担任の教師は優等生のチアイー(ミシェル・チェン)にコーチンの見張りをするよう頼む。当初コーチンは勉強するように言ってくるチアイーをうるさがるが、次第に気になる存在になっていく。また、チアイーも自分とは違う視点を持つコーチンを好ましく思うようになる。しかしグループ交際から抜け出せないまま別々の大学へ進学していく二人。コーチンはどうしても素直に気持ちを伝えられず、すれ違いが重なっていく。やがて社会人となりそれぞれの道を歩んでいたある日、チアイーの電話によって仲間たちが再び集まることになる……。
ソース元:映画-Movie Walker > 作品を探す > あの頃、君を追いかけた
本作品のより詳細な情報は公式サイトでチェックできます。
さて、本作は青春映画ではありますが、10代、20代の方たちだけでなく、むしろ30代以上の方たちにこそ、是非とも観ていただきたい映画作品です。
何故なら、自分自身が高校生、大学生だった “あの頃”の気持ちが蘇ってくるような物語だからです。
誰もが青春時代に体験すること、思春期の揺れ動く気持ちや恋心がリアルに描かれています。
何でこんなにリアリティーのある物語なのだろうと思って、後から調べてみたところ、原作は、台湾の人気作家ギデンズ・コー(九把刀)さんの自伝的インターネット小説とのこと。
しかも、ギデンズ・コーさんの本名は柯景騰(コー・チントン)で、本作品の主人公と同じです。
さらに、彼はこの作品で脚本・監督も担当しています。
本作が映画初監督作品とのことですが、とても初監督作品とは思えないクオリティーで、文章の才能だけでなく、映像分野でも素晴らしい才能をお持ちの方だと思いました。
原作が自伝的小説なので、フィクションの部分と作者自身の実体験や感情、実在する登場人物達が融合することによって、過剰にドラマティックで現実離れしたストーリーではなく、自然な台詞や繊細な描写が生々しく、リアルな青春ドラマに仕上がったのではないでしょうか。
「あの頃、君を追いかけた」は、映画公開当時に台湾で社会現象となり、香港では中国語映画の歴代興行収入ナンバーワンを記録するなど、超大ヒット作となったそうですが、既に大人になってしまった観客である“あの頃の若者達”に、劇中の登場人物たちの成長と共に移り変わっていく時の流れが、自分自身の青春時代、大人になっていく過程で移りゆく時代の変化、自分を取り巻く環境の変化などと重なる部分があったり、それらを懐かしく思い出させてくれる作品だからこそ、社会現象になる程のメガヒット作となったのでしょう。
そして、主人公のコートン役を演じたクー・チェンドンさんと、ヒロインのチアイー役を演じたミシェル・チェンさんの二人の自然な演技がとてもよいのです。
特に、ミシェル・チェンさんは、本作品の撮影当時の年齢は27歳か28歳ぐらいだったと思われますが、驚くべきことに女子高生役に全く違和感がありません。
笑うと、えくぼのできる愛くるしい丸顔がとっても可愛らしい、清楚な感じの女優さんです。
「青春は恥と後悔と初恋で作られる」という映画のキャッチコピーそのままの青春恋愛物語で、全編にわたって「青臭い」という言葉がピッタリの若さと純粋さに溢れたストーリーです。
『あの頃、君を追いかけた』予告編
本作品の話の結末ですが、ネタバレになってしまうので、具体的なことは書きませんが、恋愛映画で定番のハッピーエンドでも、主人公のどちらかが死んでしまうといった類の観客の涙を誘うようなものでもなく、現実的な結末を迎えます。
めでたしめでたしのハッピーエンドではありませんが、大人になって再び集まっても高校生の頃と変わらない仲間たちの心の繋がり、粗野で幼稚だった主人公のコートンが、優しさを持った大人の男として少し成長した姿と、チアイーに笑顔と優しい眼差しを向ける表情、そして大人になったチアイーの柔和で可愛らしい笑顔、それら全てが、眩しくて、甘酸っぱくて、胸が熱くなると同時に少し苦しくなるような、そんなラストシーンです。
観終わった後に、とても爽やかなスッキリとした、それでいて少し切ない気持ちにさせられる作品でした。
因みに、本作品の英語タイトル “You Are the Apple of My Eye” ですが、“the apple of one’s [someone’s] eye” は「(人)にとって何よりも愛しい[自慢の]人・もの」という意味のやや古風なイディオムですので、和訳すると「あなたは私にとって何よりも愛しい人です」とか「君は僕にとってかけがえのない人」といった感じになります。
この表現の由来(語源)ですが、「瞳」と「りんご」の形が似ていることと、目(瞳)が人にとって大切な感覚器官であることから、そこから転じて「(瞳と同様に)大切なもの」を意味する慣用句となったようです。
日本語にも「目(の中)に入れても痛くない」という同様の意味を表す慣用句がありますが、それとは語源的に異なります。
原題「那些年,我們一起追的女孩(あの頃、君を追いかけた)」が、主人公コートンとその悪友たちが皆、ヒロインのチアイーに好意を寄せていたこと、夢中だったことを示唆するようなタイトルであるのに対して、英題の方は、コートン自身のチアイーに対する強い思いをストレートに表現したタイトルになっていると言えるのではないでしょうか。
欧米人と比較すると、概してアジア人はシャイで、ストレートな愛情表現が苦手なので、もし、原作者のギデンズ・コーさんが、原題を隠れ蓑にして、英語タイトルの方で自分自身のチアイーに対する本心を吐露しているのだとしたら、とてもロマンチックですね。
それから、劇中に流れる挿入歌とBGMが、なかなか良い感じに映画を盛り上げてくれています。特にC-POPが好きな人にはおすすめです。
因みに、主題歌「那些年」の作詞は、原作者であり監督のギデンズ・コー(九把刀)さん自身が手掛けていて、作曲は木村充利さんという日本人作曲家で台湾在住の方のようです。
【那些年,我們一起追的女孩】電影主題曲《那些年》官方正式MV
オリジナルサウンドトラックは、国内盤CDはリリースされていないようですが、輸入盤(台湾盤)で聴くことができます。
今までに香港や中国の映画は割と沢山観ていて、それらの中には台湾の俳優さんが出演している映画もありましたが、台湾映画を観るのは本作品が初めてでした。
「あの頃、君を追いかけた」を観て、他の台湾映画にも興味が湧きました。
特に「青春映画なんて、いい歳して観るのは恥ずかしい」と思っている中年層の人たちにこそ、是非とも観ていただきたい作品です。
【日本版リメイク作品】
本作は、日本でリメイク作品が制作され、2018年に公開されました。
主人公を山田裕貴さんが、ヒロイン役を超人気アイドルグループ「乃木坂46」の齋藤飛鳥さんが演じて、話題になりました。
オリジナル作品が、かなりの高評価を得ているので、こちらのリメイク作品については賛否両論あるかと思いますが、映画作品紹介サイトなどでは、軒並み低評価より高評価のレビュー・評価・感想が多いように見受けられます。
こちらの日本版リメイクの感想は、原作をリスペクトしているというか、設定こそ日本に移していますが、良くも悪くもストーリーに変なアレンジを加えておらず、全体的によく纏まっていて、個人的には観て良かったと思える作品でした。
特に、ヒロイン役の齋藤飛鳥さんは、とても可愛らしく、自然な感じで、はまり役だと思います。
映画『あの頃、君を追いかけた』予告
日本版リメイク「あの頃、君を追いかけた」も、併せておすすめします。